スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

マツカワ(タカノハ)特集 ~第四章~

第四章ではマツカワの放流・再補結果、100万尾放流事業の内容、
無眼側色別による雌雄判定、釣り実験等を紹介します。


第一章はマツカワの外観と形態を紹介しています。
第二章ではマツカワの生態の内、生息場所や分布などを紹介しています。
第三章では繁殖生態と移動範囲、食性や異体の実態などを紹介しています。

まだご覧になっていなければこちらからどうぞ↓

【マツカワ(タカノハ)特集 ~第一章~】

【マツカワ(タカノハ)特集 ~第二章~】

【マツカワ(タカノハ)特集 ~第三章~】




1.道東海域のマツカワ人工種苗の放流状況および再補結果

マツカワの人工種苗の放流は、1987年に厚岸町で開始され、その後北海道の日本海を除く海域で実施されています。また、標識放流も各地で行なわれ、再補結果を基に、放流後の漁獲される漁具・漁法や年齢、分布・移動、成長など放流効果やマツカワの生態について明らかにされてきています。
道東海域における種苗放流の状況と報告については下記の通りです。

※1マツカワの年齢について
人工種苗の採卵時期が3~4月となっていることから、年齢起算日を4月1日とし、10月1日で0.5歳を加齢しました。したがって、年齢は例えば1歳魚のうち、4月1日~9月30日、10月1日~3月31日の期間に再補されたものをそれぞれ1.0歳、1.5歳と表わしています。

※2マツカワの年齢別の大きさ
春に生まれた稚魚は4~5ヵ月後、約8センチで放流され、翌年の秋、1.5歳で30センチ、2.5歳で45センチ、3.5歳で50センチになる成長の早い魚です。


1.標識放流試験と年齢別再補状況
十勝海域(豊頃町、大樹町、広尾町、広尾町音調津)2001年までに40,925尾が標識放流再補尾数831尾、再補年齢0.5歳~4.5歳、最も多い再補年齢1.5歳。
釧路海域(釧路市)2003年までに14,773尾が標識放流、再補尾数22尾、再補年齢0.5~3.5歳、最も多い再補年齢1.5歳。
根室海域(羅臼町、標津町、別海町)2001年までに14,374尾が標識放流、再補年齢0.5~3.5歳、最も多い再補年齢2.0歳。

2.再補場所と年齢の関係
①広尾町放流群
3.5歳までは大樹、豊頃、広尾町の十勝海域の比率が高い。4.0歳、4.5歳では日高海域における比率が最も高い。東側の釧路町、釧路市での再補の比率は低い。西側では日高海域の各町で1.0歳以降、胆振海域では1.5歳に鵡川町や苫小牧市、本州海域では1.5歳に青森県、3.5歳に福島県でそれぞれ再補あり。
②豊頃町放流群
東側は浜中町まで、西側は静内町まで再補されている。2.5歳までは十勝海域での再補がほとんどであり、3.0歳になると日高海域の浦河町における比率が最も高い。
③釧路市放流群
0.5歳、1.5歳、2.5歳で釧路市の比率が最も高い。東側の再補は1.0歳、1.5歳に釧路町、厚岸町でみられるだけ。西側では1.5歳に白糠町~豊頃町、2.0歳に豊頃町~大樹町、2.5歳にえりも町、3.5歳に様似町と、年齢の増加とともに再補場所が西側へ拡大。
④羅臼町放流群
各年齢とも羅臼町の比率が最も高く、標津町でも1.0~3.0歳の各年齢で再補がみられた。2.0歳までの再補のほとんどは根室海峡内で、海峡外の再補は太平洋では2.0歳時に釧路町の1尾のみだが、オホーツク海では2.0歳時に斜里町、網走市、湧別町、3.0歳には斜里町と宗谷海峡近くの猿払村で再補あり。

3.年齢と再補漁具
①十勝放流群
1.5歳、2.5歳、3.5歳時には桁曳網による比率が高く、1.0歳、2.0歳、3.0歳では釣りによる比率が最も高い。4.0歳以降は刺網による比率が高い。また沖合底曳網でも2.5歳以降から再補されている。全体での再補比率の高い順位は桁曳、釣り、刺網、定置、沖底となっている。
②釧路市放流群
年齢によって再補漁具が異なり、0.5・1.0歳では定置網、1.5・2.5歳では桁曳網、2.0歳では刺網による比率が高い。全体での再補比率の高い順位は桁曳、定置、刺網、釣りとなっている。
③羅臼町放流群
3.0歳まで各年齢とも刺網による比率が過半数を占め、次いで定置網となっており、全体でもこの2漁業による比率が高い。

4.放流後の分布・移動について
①主な再補場所は、各地とも2.5歳までは放流場所及びその周辺町村となっているが、他海域の再補例もあり、羅 臼町放流群では太平洋側よりオホーツク海側が多くなっていた。
②太平洋側の釧路市放流群や広尾町放流群は、厚岸町放流群と同様に東側の再補例は少なく、更に年齢の増加に伴い、西側での再補比率の増加や再補範囲の拡大が見られた。
③日高海域は広尾放流群の4.0歳以上における再補の中心、また釧路市放流群の3.5歳における唯一の再補場所となっている。

放流されたマツカワは放流後、2.5歳までは放流場所及びその周辺に分布していると考えられます。しかし、根室海峡の羅臼町で放流されたものの一部は主にオホーツク海に移動し、一方、太平洋側の釧路海域や十勝海域で放流されたものの多くは西側に移動し、3.5歳以上になると、主に日高海域に分布している可能性が考えられます。
再補年齢や各年齢時の再補漁具に海域間の相違が見られましたが、この理由は次のように考えられます。道東海域では春季及び秋季の刺網や定置網は、水深20m以浅、特に10m以浅の設置が多く、釣りは6~8月に防波堤や砂浜からの投げ釣りで、水深数m位浅で行なわれています。桁曳網は秋季10月上旬~11月下旬におおよそ20m位浅で操業されます。さらに冬期の刺網、沖底ではそれぞれ水深100~200m、水深数百mとなっています。各地域におけるこれらの漁具の時空間的な配置の相違によって、海域間の再補年齢や再補漁具に相違が生じたのかも知れません。
 しかし道東海域のマツカワもえりも以西海域のように、春季から秋季には水深20m~砕波帯(波打ち際)、冬期には沖合域100~数百mに分布する季節的な深浅移動を行なっている可能性も示唆されます。

5.再補率について(海水温度との関係)
0歳魚を放流した羅臼放流群、釧路放流群の再補率はすべて1%以下であり、1歳魚放流や十勝海域と比較して低い値を示した事に注目しました。

①オホーツク海では水温1℃で放流された年の再補率は0%となったということが網走水試から報告された。
②羅臼漁協からは冬季間-1℃の水温で飼育すると死んでしまうが、0℃では死なないこと、2~3℃の水温に直接入れると短時間で動かなくなるという情報を得た。
③中央水試の飼育結果では、マツカワは5℃で摂餌を中止、6℃で摂餌を開始し、さらに8℃で成長を停止すると報告されている。
④放流が開始される10月以降の各地の沿岸水温をみると、8℃の水温は紋別市では11月中旬、広尾町、釧路町、羅臼町では11月下旬、5℃に低下する時期は紋別市では12月上旬、羅臼町では12月上~中旬、釧路市では12月中旬、広尾町では12月中~下旬となっている。
⑤春季において6℃に上昇する時期は紋別市では4月下旬、広尾町、釧路市、羅臼町では5月中旬となっている。さらに釧路市では2月には0℃近い水温になり、紋別市や羅臼町では1月~3月に0℃以下の水温になっている。

これらから12月上~中旬に羅臼町や釧路市で放流されたマツカワ0歳魚は、放流直後から成長はもちろんのこと、摂餌もできない状況にあり、放流後もその周辺海域に留まるとしたら、春季に水温が6℃に達するまでの約6ヶ月間摂餌できず、その間0℃やそれ以下の水温域に生息していることになります。すなわち12月上旬~中旬に根室海峡~釧路海域で放流されたマツカワ0歳魚の再補率の低さは放流時期が適していなかったことによって生じた可能性があります。
現在、道東海域では放流技術、すなわち、いつ、どこに、どんな大きさのマツカワを放流すれば高い効果が得られるのかということがまだ分かっていません。今後の道東海域における放流技術開発に向けては、放流時の水温や桁曳網を始め、再補の多い漁業の漁期、漁具の配置も考慮すべきであると考えられます。
(以上、北水試だより60(2003)より引用、編集)


2.えりも以西海域におけるマツカワ100万尾放流事業について

人工種苗による放流が行なわれてから、生産技術、放流魚の成長、移動、食性、放流方法など様々な研究が進められてきて、その結果を元に平成18年、2006年秋よりえりも町から函館市南茅部までの太平洋沿岸(えりも以西太平洋海域)で稚魚100万尾の本格放流がはじまりました。
この放流事業に先立ち、平成18年5月には放流事業の円滑化を図るために、北海道水産林務部水産局水産振興課、北海道立栽培水産試験場、北海道立函館水産試験場、社団法人北海道栽培漁業振興公社により「マツカワ放流マニュアル」が作成され、各関係機関及び関係者に配布されました。

それではマニュアルの中に記載されている内容を簡単に紹介します。

Ⅰ放流前にしておくこと
1.放流適地の選定
「水深10m以浅の砂地に放流しましょう」
マツカワは砂に潜って身を隠す習性があることから、放流場所は砂質の海底が適しています。岩礁域や玉石ではなく、砂底が広がる場所に放流しましょう。全長6~13㎝のマツカワはヨコエビ、エビジャコ、アミ類などの小型甲殻類や魚類の稚仔魚など概ね3㎝以下の小さな動物を幅広く摂餌していました。ー中略ー 一般に、生物相が多様で小動物類が多く生息していると考えられる「10mより浅い場所」を候補地とし、できれば河口の周辺などに放流しましょう。
「放流種苗を混獲する漁業または遊漁の影響が少ない場所に放流しましょう」
比較的小型の魚類を獲る漁業(ししゃも桁網やはたはた刺し網など)が放流場所付近で行われる場合は、放流種苗が大量に混獲される場合がありますので、このような場所(時期)には放流しないようにしましょう。ー中略ー 
「捕食者が少ない場所に放流しましょう」
マツカワを捕食する生物としてカジカ類、アイナメ(アブラコ)類が確認されています。また、カニ類も捕食者となる可能性があります。したがって、このような大型魚類や甲殻類があまり多くない場所に放流する必要があります。

2.放流適期
「放流場所の水温が9~20℃の範囲のときに放流しましょう」
マツカワは9℃未満では成長が停止し、5℃未満では摂餌活動をしません。また、20 ℃以上では活力が低下し、特に輸送などをする場合のストレス耐性が極めて低くなります。したがって、放流を行う場合の現地水温は9~20℃の範囲であることが重要です。噴火湾内の豊浦町では5月~11月、また、太平洋に面した浦河町では6月~11月が適期と言えます。
~以下説明文省略~

3.放流方法の決定
「現場の状況に合わせて適切な方法を選びましょう」

Ⅱ放流
1.直前の準備
「放流日、時間、場所など関係者間で綿密な連絡をとりましょう」
「時化模様または直後に時化が予想されるときには放流を延期しましょう」

2.放流時の注意
「種苗にストレスを与えないように細心の注意を払いましょう」
「種苗はていねいに取り扱いましょう」
「放流はゆっくりと注意深く行いましょう」
「放流後の様子を観察し、記録を取りましょう」


Ⅲ 放流後の調査
「放流後の調査をしましょう」

Ⅳ 放流効果の把握
1 市場調査
「効果判定のために必ず市場調査を実施しましょう」
「漁獲統計調査<月別漁獲量と金額>の実施」
「漁獲物測定調査<全長測定>の実施」


マニュアルではいつ、どこに、どういう方法で種苗を放流するのが良いのかを記載しています。また、放流される人工種苗の追跡調査をすることで不明な部分を少しでも明らかにしてマニュアルを改訂していき、市場調査を実施して「出資と収益の関係」等、問題の検証と対策を立てることによりマツカワ種苗放流事業を実りあるものにすることを目的としています。


放流地点、放流数(平成20年度実績)

次に、実際に100万尾の放流が始まって、それではどの場所でどれ位放流されたかを紹介します。

放流実績
(画面をクリックすると大きい画像を見ることが出来ます)

紹介したのは平成20年度の実績ですが、21年度、22年度においても放流場所は大きく変わってはいないと思われます。これを見ると、日高の6町で50万尾の放流が行われているんですね。えりも町だけでも17万尾強の稚魚が放流されています。また、日高地区では漁港内の放流が多いのが分かると思います。


3.無眼側色別による雌雄判定

黄色は雄?
漁獲物の体サイズなどを市場で調べてみると、マツカワには無眼側(目の無い側)の体色が白い個体と黄色い個体がいることに気付きます。なかには濃いオレンジ色の個体もいて、体色異常のようにも見えるため、仲買業者さんなどから「黄色は放流か?」と聞かれた事もありました。この時は、図鑑などの記載に基づいて、「現在漁獲されているマツカワはほぼ全て放流魚であり、黄色はおそらく雄です」と答えました。

ここで、マツカワの体色に関する図鑑の記載を確認してみます。日本産魚類大図鑑第二版には「雄では無眼側は橙黄色」、漁業生物図鑑北のさかなたちには「一般に無眼側は雌では白く、雄では橙黄色であるために、雌雄を区別できるが、中には無眼側の白い雄もいる」、新北のさかなたちには「無眼側が橙黄色のものが雄、白色のものが雌とする人もいるが、実際には白い雄もあり、さらには人工種苗では橙黄色の雌も出るなど、無眼側の色による雌雄の判断は難しい」と記載されていました。

画像 釣魚:無眼側の白い個体と黄色い個体
マツカワ無眼側体色



無眼側色による雌雄判別は可能か?
高価なマツカワを購入しなくても魚体の観察だけで雌雄判別ができるとすれば、この方法は放流効果調査や繁殖生態研究などに活用できる可能性があります。このため、2007年から、【黄・淡黄・白】の3区分(客観的な基準は定めていない)で判定する事により、性別と無眼側色の関係を調べてみる事にしました。
これまで計313尾について性別と無眼側色の関係を調査した結果、雄120尾中、黄57尾、淡黄46尾、白17尾、雌193尾中、淡黄11尾、白182尾となりました。これにより、黄または淡黄を雄、白を雌とした場合、雄では86%、雌では94%、全体では91%が無眼側色により性を推定できたことになります。このことから無眼側色による雌雄判別は確実ではありませんでしたが、高い確立での推定は可能であると考えられました。ー表1参照ー

表.1
(画面をクリックすると大きい画像を見ることが出来ます)


なぜ体色に雌雄差があるのか?
ヒラメ・カレイの仲間ではマツカワのように雌雄で体色が明瞭に異なる種はあまりしられていないようですが、マツカワではなぜ体色に性差があるのでしょうか?今回調査した雄120尾について全長別に無眼側色を調べてみたところ、大型になるほど黄色個体が多くなる傾向がみられました。また、2007年12月に釧路沖合刺網で漁獲された雄個体について、全長、生殖腺体指数と無眼側色の関係を調べてみたところ、無眼側が黄色の雄はすべて生殖線体指数が高くなっていました。これらのことから、無眼側の黄化は雄の性成熟に関係している可能性があります。
魚類一般で体色に性差がある種を考えてみると、サケ科、アイナメ科、ベラ科など、繁殖期に婚姻色に変化し、求愛行動やペア形成を行う種が多いようです。マツカワでは水槽内での自然産卵に関する研究から受精には雌雄のペアリングが必要であることが指摘されています。これらのことから、雄の無眼側に現れる黄色は、産卵期にペア形成を行うために必要な成熟オスの婚姻色なのかもしれません。


繁殖生態研究への活用
えりも以東海域で漁獲されているマツカワは全長30~40cmが主体であり、45cm以上(4歳以上)の雄や全長60cm以上(5歳以上)の雌はあまり漁獲されていません。これは小型サイズでの漁獲が多すぎることだけでなく、性成熟した成魚が海域外へ移動することも影響しているのではないかと予想しています。また、東北地方太平洋側の沖合海底で漁獲されているマツカワは、北海道での漁獲が少ない1~4月が主要漁期であり、キマツカワと呼ばれる無眼側が黄色い全長40~50cmの個体と、メマツカワと呼ばれる無眼側が白い全長60~70cmの個体が主体であるという情報があります。

これらのことから、えりも以東海域で性成熟したマツカワは他海域へ移動し、東北太平洋海域まで産卵のため回遊している可能性も考えられます。今後、北海道から東北太平洋沿岸の各地における漁獲状況(サイズ、時期、尾数など)を無眼側の体色別に把握できれば、雌雄別に回遊を開始するサイズや時期などを解明することができるかもしれません。
(以上、釧路水試だより№89(2008)より引用、編集)


4.釣り実験と海中還元効果

 えりも以西海域でのマツカワ100万尾大量放流にあわせて、2006年(平成18年)8月8日から、海区委員会指示が発動され、えりも以西海域では、全長35㎝未満のマツカワが捕れた場合には、漁業者、遊漁者とも海中還元( 海に戻す)することになりました。放流されたマツカワは、1歳半(放流後の翌年10月頃)で全長約25㎝、2歳半で約35㎝、3歳半で雌なら約47㎝にも達する成長の早い魚です(図1参照)。35㎝未満のマツカワを海中還元すれば、翌年には10㎝以上成長し、重量も1㎏前後に増加し、さらに単価も高くなります。
図1 マツカワの成長曲線

 海区委員会指示の発動に伴い、釣獲と漁業による再捕放流後の生き残りに対する疑問が遊漁者や漁業者から投げかけられています。そこで、いったん釣獲や漁獲された全長35㎝未満のマツカワをどういう方法で、どのくらいの時間で海中還元すれば生き残りが多いのか、海中還元の指針作りを目的として、釣り実験や干出耐性(空気中に露出)実験を行ったので、その結果について紹介します。

1.釣り実験の方法
 放流直後を想定した2006年11月に1回目(0歳 352尾 全長7~16㎝平均全長約13㎝)、放流後約1年を想定した2007年9月に2回目(1歳 189尾 全長16~26㎝平均全長約22㎝)の実験を行いました。1回目(0歳対象)の実験は、実験前日に給餌を止め、釣針の種類・号数別(市販のカレイ針12~18号、セイゴ針8~16号、チカ針2~6号)、餌種類別(イカ、生イソメ、塩イソメ、ワーム、キビナゴ、オキアミ)に、全長、針掛かり状態等を測定しました。さらに、釣獲された魚(352尾)から針を外した個体(298尾)、強引に外した個体(9尾)、外さなかった個体(45尾)に分け、水槽(4トン)2基に戻し、約2か月間給餌を続け、生残数や針が外れた数を調べました。
 2回目(1歳対象)の実験は、市販のカレイ針12~14号を用い、全長、針掛かり状態を測定しました。さらに釣獲された魚(189尾)のうち針を飲み込んだ個体(65尾)だけ針を外さず、水槽(4トン)1基に戻し、約2か月間給餌を続け、生残数や針が外れた数を調べました。

2.釣り実験の結果
 0歳の結果によると、カレイ釣りに通常使用されるカレイ針(12~14号)では、全長9~15㎝でも釣獲され、ふところの短いチカ針(2~4号)だと、さらに小さい8㎝以下でも釣獲されることがわかります。また、針が小さいほど(ふところ長さが短いほど)咽頭~胃の部位に針がかる比率が高く、つまり針を飲み込まれる割合が高くなります。なお、 餌の種類による釣獲の差は、ほとんどありませんでした。
 0歳(針を外した個体、外さなかった個体を含む352尾)を対象にしたリリース後の生残率については、約60日間経過後で98.8%と高く、飲み込んだ針(咽頭~胃)を強引に外した9尾のうち4尾が1日以内に死亡したのみでした。針を外さなかった45尾のうち、19尾(42%)の針が外れていました。
 1歳魚(針を外さなかった個体のみ65尾)を対象にしたリリース後の生残率は、約60日間経過後で89.2%と高く、針を外さなかった65尾のうち、なんと47尾(72.3%)の針が外れていました。針が外れた原因としては、針が錆びて弱くなると外れやすくなること、異物をはき出す習性等があることが考えられます。なお、摂餌状況を観察した結果、針が外れていない魚でも、翌日から餌を食べており、これも生残率の高かった要因の一つだと考えられます。

3.干出耐性実験の結果
 環境条件別に生残率50%の干出時間を比較した結果、湿状態では約170分と長く、乾燥状態ではコンクリート上の日陰では約75分と短く、日光にさらした場合では当然ながら約17分と極端に短くなりました。次にサイズ別に比較した結果、1歳の平均全長約16㎝では、約34分、平均全長約19㎝では約35分で、これらのサイズでは生残率50%の干出時間に差はありませんでした。ちなみにマダイの人工種苗では、全長6㎝以上になると、生残率50%の干出時間には差がなくなることが知られています。

4.遊漁者の方への提案
1.35㎝未満の釣獲を減らすために、針は大きめにしましょう。
2.海中還元するまで、日光にさらしたり、乾燥させないことが重要です。
3.針を飲み込んでいる場合は、針が外れる確率は高いため、針は無理に外さず、ハリスを切って放流しましょう。
4.口掛かりの場合、外しやすければ、外して放流しましょう。

5.漁業の方への提案
1.定置網や底建網:船上で選別可能な場合は速やかに放流し、船の水槽に入れ帰港して選別する場合では、生残も良いため、選別時に港から放流しましょう。
2.刺し網:船上で揚網し、陸で網外しを行う場合が多いので、魚体を日光にさらしたり、乾燥状態にさせず、網外し後に港から放流しましょう。

5.おわりに
 今回の実験で海中還元の指針を提案できました。また、海中還元の指針ではありませんが、種苗の選別、移送、標識装着時には給餌を止めておくことも非常に重要です。大量放流開始後2年の2008年度で、えりも以西海域におけるマツカワの漁獲量は約87トンと急増し、放流効果が顕著に現れてきています。2009年度には、さらに漁獲増が予想されていますが、漁獲増に伴う単価安に歯止めをかけるためにも、全長35㎝未満の海中還元の徹底が望まれます。
 海中還元の実践は、困難な場合があるかもしれませんが、 漁業者、遊漁者ともに、「明日の百のために今日の五十」でなんとか我慢してもらい、1年後のさらに大きくなった魚に期待しましょう。
(北水試験だより 79 (2009)より引用・編集)


まとめ

 今回当ブログでマツカワの特集を組むにあたり、北水誌だよりや研究誌、関連情報などを調べて栽培事業の内容が分かるにつれて、関係者の方々がマツカワの資源回復のために大変な努力をしていることを改めて知る事ができました。正直申しますと、自分が初めてマツカワガレイを釣ったのは2007年ですが、この頃は35センチ未満海中還元のことはなんとなくは知っていましたが、針を飲み込んだ個体は30センチ前後でも持ち帰っていました。また、他のカレイについても針を無理やり外してリリースした事がありました。今から思うととても恥ずかしい行為だったと反省しています。今回、針を飲み込んだカレイでもハリスを切って放してやれば、高確率で生き残ることが分かったので、今後は実践して行きたいと思います。

 それともうひとつ、東日本大震災で北海道の漁業関係施設にも大きな被害が出ましたが、えりも町にある北海道栽培漁業えりもセンターも海水が1・5メートルの高さまで浸水し、電気設備や配管などが損壊し、水槽も泥にまみれる被害にあったそうです。このセンターではマツカワやハタハタの飼育を行っているそうですが、いまだに復旧工事が手付かずの稚魚育成施設もあります。修理資材入手困難なうえ、国の予算配分不明と暗礁に乗り上げていましたが、このほど道が国の第1次補正予算成立を受けて、漁業被害対策費として約48億5千万円を計上し、この中には道栽培漁業えりもセンターの復旧費として約9千万円も盛り込であると知って、正直安心しました。自分は何も出来ませんが、一釣り人、また一消費者として一日でも早く施設が復旧して元通りの栽培事業に戻る事を願っております。

それではかなり長くなりましたが以上で第四章を終わります。最後まで付き合ってくださりありがとうございました。次章ではいよいよマツカワの釣り方、餌、仕掛け、近年の釣果情報などを紹介する予定です。



「長すぎて疲れたぞ
と思ったらぽちっとね♪

にほんブログ村 釣りブログ 投げ釣りへ
にほんブログ村 釣りブログ カレイ釣りへ

関連記事

テーマ : 釣り
ジャンル : 趣味・実用

コメント

§ 参考になります。

どうもです。

一種類の魚について随分詳しい調査結果があるのに驚きました。
どんな種類の魚であれ…東京湾の青鱚のように絶滅する魚種がひとつでも無いように意識しながら普段の釣りを続けようと改めて感じます。

(*^▽^*)

§ コメントありがとうございます。

イセさん、どーもです。

マニアックな特集にお付き合いいただきありがとうございます。
東京湾の青鱚、高度成長とともに開発の波に飲まれて、
昭和40年代に絶滅したんでしたね。
九州東岸ではわずかに生息が確認されているようですが、
なんとしても絶滅だけは防がなければいけないと思います。

このマツカワガレイも今では天然物はほとんど見られません。
放流魚が繁殖活動しているかどうかも定かではありません。
食べると非常に美味しく価値ある魚だけに、
早く生態が解明されて自然繁殖するようになればと思っています。

§ 確か…

青鱚を公開しているかまでは、知りませんが大分で捕獲された魚が千葉で飼育されて東京湾に放流する計画は進んでいるみたいですが、東京湾内の海底はタンカーのバランサーの海水放流の影響で外国の魚などが住み着いて生態形が既にくるっているので今更綺麗好きな鱚を放流するほうが残酷な気がします…現在ではシーバスが異常に多いので恰好な餌を放り込むような感じしますが…。(≧ー≦)

§

全部読んだどぉ~
読み終わると マツカワが釣れるような気がしてくるから
不思議です

・・・・・がんばろ

§ 字が多い

全然いつものヒロボーさんブログじゃない・・・
読んでいたら目が回ってきましたv-394
これも今年にかける意気込みの現れでしょうか(笑)

§ 幻の…。

こんばんは

針を飲み込んだままでも生きるんだね~

太平洋とマツカワですか、、、。v-466

§ ありゃりゃ

イセさん、

東京湾の魚類の生態系がくるっている・・・・怖い話ですね。
外来魚の影響は北海道の河川でもあって問題になっています。

それはそうとして、青鱚の放流計画、東京湾でなくても上手くいけば・・・
マツカワのように資源回復されることを願っています。

§ お疲れ~

キムチ親爺さん、

全部読んだら疲れたでしょ(笑)
函館方面でも時々釣果情報ありますよね。
今年はきっと釣れますよ。
釣ったら得意の料理で楽しんでください。
絶対まいうーです。

§ ほんとですね。

やみいさん、

こっちもどっと疲れました。
今年にかける意気込み・・・というか、
少しでも多くの人に釣ってもらって、
美味しく食べてもらいたいんですよ。
今はまだ関係者や釣った人しか、
この魚の価値が分からないと思うので・・・

§

マルコさん、

自分も初めて知りましたよ~。
生命力ありますよね。
太平洋にマツカワあり・・・です。

コメントの投稿

非公開コメント

お知らせ
 今後の更新予定 (順不同)

男はつらいよ大特集(ヒロボーが選ぶ寅さんベスト、寅さんの口上、仁義、名セリフ、笑えるシーン、泣けるシーン、全48作の紹介、感想など)
その他、釣果報告、釣魚紹介、調理方法、釣魚料理等随時更新
お楽しみに♪
プロフィール

ヒロボー

Author:ヒロボー

ようこそいらっしゃいました。
ここは北海道在住、ヒロボー
のブログです。休みになれば
海か山へ出没しています。

日本ブログ村 
人気ランキングPVです^^
参加中です(^^)ノシ
 お帰りはこちら 

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 釣りブログ 投げ釣りへ にほんブログ村 釣りブログ 北海道釣行記へ にほんブログ村 アウトドアブログへ にほんブログ村 アウトドアブログ 自然観察へ にほんブログ村 料理ブログ 各国料理(レシピ)へ にほんブログ村 花ブログ 果樹・野菜(家庭菜園)へ
FC2ブログランキング

関連メーカーサイト
フィッシング用品のメーカーサイトです。
fujiwara SUNLINE
SASAME YAMATOYO
gamakatsu Hayabusa
SHIMANO DAIWA

アウトドア用品のメーカーサイトです。

Coleman CAPTAIN STAG
LOGOS North Eagle
saint-gentleman

その他ヒロボーが好きなサイトです。

torasan WILD TURKEY
リンク、バナー画像に関するお問い
合わせがありましたら、メールフォ
ームにて連絡してくださいませ。
お気に入りなサイト・ブログ様
カウンター
オンラインカウンター
現在の閲覧者数:
カテゴリ
最新記事
最新コメント
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
月別アーカイブ
潮位表(北海道苫小牧市)
天気予報
ニュース
MMOタロット占い
☆今日の運勢を占いましょう☆
釣り好きはクリックでしょ!
『○○大好き』ブログパーツ
名言集100
ブログ内検索フォーム
当ブログ内で検索したい語句を入れて下さい。その語句を含んだ記事が一覧で表示されます。
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Google Page Rank
ページランク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコードです。
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。